カブエモンです。
最初に正直に言っておきます。
私はこの文章を、何度も書くのをやめようとしました。書いていると、当時の匂いが戻ってくるからです。古いコンクリートと、冷めたコーヒーと、自分の脂汗の混ざったような、あの深夜のオフィスの匂いが。
それでも書くのは、あなたに「正直な話」を聞いてほしいからです。成功法則でも、投資テクニックでもない。ただの、一人の男の話を。
私が起業した本当の理由
かっこいい動機など、ありませんでした。
二十代の私は、端的に言えば「認められたかった」のです。学歴でも、家柄でも、特別な才能でもない。何もない自分が、唯一「すごい」と言ってもらえる可能性が、起業だと思っていました。
最初の数年は、うまくいっているように見えました。実際、数字だけ見れば悪くなかった。ただ、今思えばあれは「うまくいっていた」のではなく、「まだ崩れていなかった」だけです。
綻びは、ある月の末日に始まりました。
経理担当の女性が、私のデスクに来て、小さな声で言いました。
「社長、来月の給与ですが、このままだと少し厳しくて」
私は「わかった、なんとかする」と即答しました。その言葉を発した瞬間、自分でも「嘘をついた」とわかっていました。なんとかする算段など、何もなかったのです。
数字が、人格を暴く
資金が底をつく過程で、私は自分という人間の醜さを、数字によって一枚一枚剥がされていきました。
銀行の融資担当者と向き合った日のことは、今でも正確に覚えています。彼は悪い人ではありませんでした。ただ、仕事として、感情を排して、私の事業計画書をめくりながら言いました。
「現状の数字では、難しいですね」
私はその場で、事業の将来性を語りました。市場の伸び代を語りました。チームの熱量を語りました。彼は静かに聞いて、静かに首を振りました。
帰り道、私はなぜか腹が立ちませんでした。怒る資格が、自分にないとわかっていたからです。私が語ったことは、半分は本当で、半分は自分に言い聞かせていたことでした。
その夜、スタッフ全員のリストを開きました。一人ひとりの名前を見ながら、来月の給与を計算しました。数字は、どう足しても合いませんでした。
私はその夜、誰にも言えずに、トイレで一人でいました。泣いたわけではありません。ただ、何もできなかった。
彼女のこと
その頃、私には付き合って三年になる女性がいました。
彼女は私の会社の立ち上げを、最初から一番近くで見ていた人でした。私が調子のいいことを言っても、現実を見ていた人でした。それでも、一度も「やめなよ」と言わなかった人でした。
限界を迎えたある夜、私は初めて正直に話しました。数字を見せて、状況を話して、もう給料も払えないかもしれないと言いました。
彼女はしばらく黙っていました。そして「一緒にいる」と言いました。お金がなくても、と。
その言葉が、私には受け取れませんでした。
彼女の優しさに甘えることは、できました。でも、私は既に自分を信じていなかった。この先も自分を信じられないと知っていた。そんな男の隣に彼女を置いておくことが、私にはできませんでした。
私は、別れを告げました。
彼女が部屋を出る時、ドアの前で一度だけ振り返りました。何かを言おうとして、やめて、出ていきました。
私はしばらく、ドアを見ていました。何の音もしない部屋で、自分がいかに何も持っていないか、初めて本当にわかりました。会社も、金も、プライドも、大切な人も。全部、私の虚栄心が壊したのです。
再起というより、出発
それからの日々を、劇的に語ることはできません。
ただ、一つだけ変わったことがあります。嘘をつくのをやめました。自分への嘘も、他人への嘘も。
できないことはできないと言う。わからないことはわからないと言う。それだけのことが、これほど難しいとは思いませんでした。そして、それを始めた途端に、少しずつ、人が戻ってきました。
数字が改善したのは、その後のことです。何か特別な戦略があったわけではありません。誠実にやっていたら、結果がついてきた。それだけです。現在、事業の企業価値は200億規模になりました。ただ、その数字に私はあまり実感がありません。あの夜のトイレの記憶の方が、今でもずっとリアルです。
投資を始めた理由
事業が安定し、余剰資金ができた頃、投資を始めました。最初は資産運用という、ごく普通の動機でした。
ところが、企業の決算書を読んでいるうちに、奇妙な感覚を覚えました。数字の向こうに、見覚えのある風景があったのです。
売上が落ちているのに固定費を削れていない会社。在庫が膨らんでいるのに強がったIRを出している会社。借入金が増えているのに「成長投資」と説明している会社。
全部、かつての私でした。
私はあの時代に、経営者として追い詰められた人間の思考回路を体で覚えていました。どこで現実から目を逸らすか。どこで虚勢を張るか。そして、どこで本当に「変わろうとしているか」。
その見極めが、投資判断に直結することに気づいたのです。
チャートでも、PERでも、アナリストレポートでもない。経営者が自分の弱さと向き合い始めたかどうか。それが、私の一番の判断基準になりました。
倒産寸前に見えた会社が、なぜある時期から急反転するのか。私には、その「転換点」が見えます。それは経営者の「覚悟の変化」であることが、ほとんどです。
最後に
私は今でも、怖いです。
大きな投資判断をする前夜は、眠れないこともあります。あの頃と同じように、暗闇の中で数字を繰り返す夜があります。
変わったのは、その怖さと付き合えるようになったことです。怖いまま、動けるようになった。
あなたが今、何かに怖さを感じているなら、それは悪いことではないと思います。怖さがある人間は、まだ本気だということです。
私はこれ以上、かっこいいことを言えません。ただ、メルマガでは、こうした話の続きを、もう少し具体的にお伝えしています。どん底の経営者が市場でどう見えるか。私が実際に投資した判断の裏側を、包み隠さず書いています。
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